→POETRY 05←

《きっと いつの日か》

のどにつまった
あなたへの言葉
声にならないのだから
あなたには聞こえないし
決して届かない

言いたかったことは
いつの間にか消えてしまう
記憶の中でも
形をあいまいに
崩れていく

どうしても
どうしても と
必死で引き止めたはずなのに
その大事な伝言は
直前で雑音に隔たれて

のどにつまった言葉は
私の中だけで反響する
徐々に大きくなる音
耳を塞いでも
無駄だと分かっているけど

爪を噛むようになったのは
言葉の代わりなのかもしれない
こちらを見てと
合図の代わりなのかもしれない
だってあなたの前だけで爪を噛む

息を止めずに
あなたと向かい合うことが
出来るようになったら
――大丈夫 いつの日か
あなたに伝えるから

=2002/05/21=

《Communication》

誰かと話すということは
誰かと言葉を共有する事で

誰かと会うということは
誰かと過去を見送って

いつでも誰かと触れ合って
いつでも誰かの手を借りて

私は生きていると
考えた事があるだろうか?

私は日々過ごしていると
思っただろうか?

答えは多分見つからない
答えは多分埋もれてる

いつから私は
諦めていたのか

いつから私は
虚構に身を任せてる

分からないほど
時は過ぎていて

気付かないほど
意思が枯れていて

心が欠けた分を
技巧で埋めた

=2002/05/20=

《暗澹》

胸にポッカリ
穴が開いてしまうのを
防ぎきれずに
失くしてしまう

この手で掴もうと
思い切り伸ばしたら
肘から先が無くて
何も出来なくて

虚ろな目に浮かぶのは
青い空の色だけで
鳥が落ちていくのを
無機質に見ている

不安に耐え切れずに
逃げようと試みる
影の中には
底知れぬ生きた闇

=2002/04/24=

《影に浮かぶ静寂》

何も考えずに
ただひたすらに
暗闇の中を

見つめれば
貴方が其処で
待っている

勝手なことばかり
ありえないと
分かってはいても

ただ独りで
窓の外に広がる
街の有り様を

笑っているのです

可笑しいものなど
何も無いのに
笑い続ける自分が

ますます馬鹿らしくて
街を笑っていたのに
いつの間にか

自分を嗤ってました
止まらないんです
呼吸が上手く出来ないのに

まだ嗤っているんです
見知らぬ誰かの背中を見つけて
ほんの少し

悲しくなりました

僕は読みかけの文庫本を
手にとって
思い切り
投げたのです
なのに窓の外は
何にも変わらなくて

素っ気なく置かれた
観葉植物
カーペット

なぜか悲痛な感が漂って
此処に居ることすら
苦痛で

どうしてでしょう?

思い出すわけじゃないんです
想い返すのでもないのです
忘れられないだけで
貴方が置いて
残った
孤独

僕は静かにカーテンを閉めました

=2002/04/05=

《痙攣》

辺りを埋め尽くす闇よりも
足元で滞る影が

冷たい狂いの月光よりも
膚を焦がす太陽光が

蠢きだして
もがき始めて

君は誰に縋り付くのか

侮蔑の眼差しよりも
嘲りの冷笑が

切り裂くような悪舌よりも
纏わりつく躊躇いが

動きだして
疼きだして

君は何に縋り付くのか

=2002/03/27=

《真摯》

淡々としたその語り口が
熱を帯びて狂ったように
いつの間にか身を乗り出して
滔々と饒舌になる

貴方が話すその理想は
貴方の妄想である事を忘れるなよ

空を仰ぎながら自嘲して
己が吐き出した言葉の数々を
偽りだと実感する
望まぬ理想は成り行きで叶う

私の話すこの虚言は
肉を帯びて実体化する

傍観し続けるのは
何よりも辛く
ただ時が流れていくのを
酷く煩わしく思う

君が思う償いというものは
そんなにも軽いものなのか

流れに気付かない程
愚かな私だから
未だ此処で立ち往生
安堵できる場所が見当たらなくて
確かに存在はあったろう
既にここは空っぽだろうけど

必死だったのは誰がも同じこと

=2002/03/27=

《破損》

絶望するのなら
いっそ其の身を焼こう

いつまでも充たされない
渇ききった色の無い心
何を求めているのか
何が救いなのか
僕自身が分からないまま
ますます塞いでいくのだ

僕がこの手を汚してまで
いったい何を欲しているのか
困惑と耐えがたい欲求の中で
どれも信じきれぬまま
僕は此処にいることだけを
確信するのだろうか

水たまりに映し出された
雲から漏れる斜陽の儚さ

=2002/03/26=

《衝動》

歯止めが利かない

奥に閉じ込めた
破壊願望
きっかけは些細

壊して楽になれるなら

具現化する幻覚
抽象的な赤が
視界を塗りたくる

喉を掻っ切って

悔いるぐらいならば
自ら業を背負ってやる
だから止めないで

骨を砕いて

所詮 人の理
私だけの囁き声は
嗤い声へと変わりゆく

目をつぶす

怨むのは筋違い
謝るのは勘違い
息絶えるには未だ早い

殺して楽になれるなら

=2002/03/19=

《浸透》

掠めた記憶

心の箍はもう限界
言の鎹で此岸に留めて
修復すべき壁を埋める

横切る思い出

理解しがたい言葉の波状
答えきれずに戸惑うものの
思考もすべて闇に帰す

視える感情

しとどに濡れた黒髪に
降り注ぐ煙雨はまだ止まぬ
限りなくしみる 罅割れた意識

=2002/03/17=

《執着》

取り上げられそうになったから
必死になって取り戻したのに
それ自体に囚われてしまって
僕はどうしようもなく困惑する

奪われそうになったから
振り下ろして粉々にしただけ

絶望的な感情と不安定な理性が
麻のように縺れて嫌気がさす
白くなるほど爪は喰い込み
赤く染まる己の腕

手を翳されて目は無意味
いっそこのまま潰せばいい

=2002/03/16=

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