まだ癒えぬ
先々の
苦しみの
まだ消えぬ
後々の
憂いなど
私が
悲しみに
私が
喜びに
感情などに
現をぬかす
その間
その合間
彼は
息も吐けず
息も吸えず
彼は
夢も見れず
夢も知らず
閉じ込められ
閉じ篭り
腕を
喉を
掻き毟ることを
知らないでいる
知らないでいた
今の今まで
知らないことにした

囚われていたのは僕の方だ
勝手なこと言って
勝手に縛られていた
君は何も言わないのに
その視線だけで勘違いしてた
ああどうしよう
どうしようもないけれど
今更どんな言葉を吐けば
許してもらえるかなど
謝りもしないうちから
自ら追い込んで
ますます
離れていく
遠ざけてしまう
気まずいままに
僕は爪を噛みながら
指を弄りながら
絶望に浸り
甘美な絶望に浸り
気付けば

呑まれてしまえば
沈んでゆけば
楽になれるかと
力を抜き
身を任せ

けれど暗闇は

私を拒み
外へと追い出した
誰が
誰かが
手を伸べて
引きずり出す

期待の破壊と
絶望への恐怖

確かに
確かめるまでもなく
私は泣いて
安堵する

もう
誰かのために
とか
大切な人を守るため
とか
いい加減聞き飽きたから
もっと　もっと
素直に話そうよ
本当は
誰のためでもなく
自分のためで
だったり
大切な人を壊すため
とか
正直に言ってしまえばいいんだよ
正義とか　悪とか
全く
全然
関係ないんだから

自分のためなら
他人だって殺してやる
くらい
思ってるんだろうに
さあ

鳥たちがどよめくその一瞬
雨は容赦なく降りしきり
凍えていく指先を別にすれば
押さえた首は何も変わらない
空っぽの胃は不快感を与え
苛ついた胸を掻き毟る

誰も近寄るな
何を言うか分からない
何をするか分からない

吐息が白に染まる瞬間
地面に落ちる鞄には
肩がぬけるほど重い闇
厭らしい私自身が入っている
隙間から覗く目に不気味さを覚え
堪らなく不安に駆られる

白かった紙は
たちまちに
黒く染まり
青く染まり
赤く染まる

連なった単語が
スコアのように
次々と
作り上げる旋律

真っ白な紙は
文字で埋まり
隙間が消えた紙は
誰かの手によって
握りつぶされ

冗談じゃない
捨てられるものか
作られた言葉は
誰にも捨てられやしない

冗談じゃない
破られるものか
その言葉は
お前のものじゃない

落書きだらけの紙は
ひとつの形を成し
多分
いつか
誰かの目に触れるはず

そうなれば
落書きは
意味を持ち
言葉として
いつか

誰かの胸に残るはず

捨てるべきものと
捨てられないものと
抱え込んで
立ち尽くす
今からやることも
やるべきことも
全て分かってるのだけど
足が動かない
指先は冷たくて
感覚を失う

手のひらにすくった水は
あんまりに透明で
空に浮かぶ月ごと
その中に包み込む

壊すべきものと
壊せないものと
両手に抱き寄せて
壁にもたれかかり
理解することも
させるべきことも
全て覚えているのだけど
その腕をつかみ
頭を伏せ
暗闇の中　息を潜む

言を殺し
心も殺し
何も言わず
全てを語る
故に私は
故に僕は
壊れることの意味も
壊すことの意義も
分からぬまま

僕を厭う

黙っていれば大丈夫だと
どうして考えていたのだろう
目をふさげば大丈夫だと
何故信じていたのか

私は何も言わない
私は何も見ない
いつだって
いつだって

耳を押さえれば大丈夫だと
私は微笑んだ
笑わねば大丈夫だと
私は真顔だった

何も聞かない
何も理解しない
大丈夫だと
誤魔化した

私は私に
大丈夫だと
嘘をついた

泣きたいときがありました
どうしても　どうしても
泣かねばおさまらぬほど
感情が高ぶっていたのです

泣けないときがありました
どうすればよいのやら
分からないくらい泣けず
ひとり　感情をもてあましました

泣くことを考えたときがありました
何のために　誰のために
泣いているのか疑問でした
今でも解決はしていないのです

泣くことは弱いことですか？
泣けないのはイケナイコトですか？
わたしは不思議でなりません

泣いたときがありました
悲しくて　苦しくて
悔しく思っていたのかもしれません
けれど今となっては思い出せません

泣いて　泣いて
ひたすらに泣いて
泣きつかれて
そこでようやく
泣いてる理由に
気付くのです