→百 81〜90←

《shout》

声も出ずに
息は切れ切れ
捕まれた腕は
引き剥がすことを願う

どの中にも
どの中でも
この中に居た
この中で消えた

叫びだけが
留まり続け
山彦みたく
意味なく響く

轟き
渦巻き
荒れ狂う
木魂のように

=2004/01/04=

《window》

開け放ったはずの窓は
無意識のまま閉ざしてしまい
整えた室内も
惨憺たる始末

鍵を閉めた扉を
蹴り破り
打ち付けたバリケードを
叩き壊す

開くことも閉ざすことも
隠すことも捨てることも

空いたままの部屋の
隔離された小部屋
ぼろぼろになるまで噛み千切る腕は
未だ桎梏から免れない

窓も扉も何もかも
届かない腕を前に
囲われたままのその躯を
酷く憎らしく思う

想うことも許すことも
構うことも逃すことも

=2003/12/13=

《bird》

鋭い鳴き声が響いて
見上げた先に影
雲ひとつない空は
圧迫するような青
震えるほど歓喜する
意味もない青

空が自由であるものか
飛ぶことで拘束される鳥たち

乾燥した質感の
老いぼれた羽の持ち主
その腕に纏うのは
それまさしく羽根
息つく間もなく
支配される

歩くことすら叶わずに
空に縛られる鳥たち

=2003/12/25=

《lament》

その言葉だけで私を底まで貶めること
貴方は気付いていないのでしょう?

喉元に突きつけられたアイスピックが
やがて皮膚を突き破ることに違和を持たない
背中を喰いちぎる蟲が顔まで上がり
内側の肉をしたたかに弄う

その態度だけで私を何処まで追い詰めたか
貴方は知らないのでしょう?

口腔に押し込められた水が
僅かばかり端から漏れて顎を伝う
足元に広がる穴は寒々しいほどに深く
それでも落ちることを許されない

視線が 声が 何もかもが
もぎ取られた腕も脚も耳も目も
じくりじくりと肌に刺さり血を流す
じわりじわりと痛みを思い出す

その存在だけで私を際まで投げ出したこと
貴方は覚えていないのでしょう?

=2004/01/17=

《A you sake》

せめてその一言だけでも
貴方に届けばよいと
それだけを思ってました
それだけを願ってました

目を閉じました
耳を塞ぎました
息を止めました
身を投げました

僕は爪を噛みます
ひたすらに噛みます
ささくれだった指から
血が流れようと

目を開けました
耳から手を離しました
息を吐きました
起き上がる気力などありません

せめてその一言だけでも
貴方に届けばよいと
それだけを思いながら

=2004/01/17=

《Give a tight hold》

私は
貴方が居なければ

光の下では存在できない闇は消えてしまう
貴方は私と出会う遥か昔に影となることを選ぶ
光が強ければ強いほど黒く染まる影となって
何も出来ぬままに闇は裡に閉じ込められ
そのままに凝ったままの
本来の自分を埋めるための穴は随分と深く
深く掘り下げてしまったようで
胸骨の隙間に熱を求める
同じ闇の温もりを求める
底冷えの夢の中で溺れ続ける
底無しの欲に沈み続ける

いっそこのまま消えてしまえば
何も見ず、何も感じず、何も思わず
知らなければ良かったことなど両手からあふれ
後悔と胸痛がじわりと染む

幾つもの作り物の笑顔を経て
たどり着くは空っぽ
必要としないのは己
必要とされないことを何処かで望む
誰とも関わらねば、何も知らずに済む

=2004/01/16=

《ridicule》

私のために生きているわけではない
私のために死ぬわけでもない
ならば私は誰のために存在してるのか
それだけでも教えてほしかったのに

笑い声が怖かった
怒鳴り声が怖かった
人の目が怖かった
何もかも怖かった

居ちゃならないのかと密かに思い
居ちゃならないんだと勝手に決めた

誰もそんなことは言わないのに
自分で問い詰めて追い込んで
壊れる前に逃げ出す
そのことにだって罪悪感を覚えた

苦しい助けてと何度叫んだか
誰に縋っても通り過ぎるばかりで
暈けた視界は徐々に閉ざされ
廻る意識は落ちるのを躊躇う

何をしているのか分からなくなって
何をしたらいいのか分からなくなって

=2003/10/19=

《terror》

佇んだまま
握りしめる刃
手放せと
誰もが囁く中で
殺してしまえと
己を誘う
どんな言葉も耳を抜け
歪んだ飢餓に追われている

助けて助けて届かない
この位置からじゃ届かない

佇んだまま
何処も見ない
誰かの呵責は
声にもならない
誰の嘆きに紛れた絶叫
憤怒に惑う
静止することを許さないまま
正視することに耐え切れない

生死などはお構い無しに
制止されることを切望する

=2003/12/15=

《relived》

生きる気力なんか
もとから放棄してるわけで
何も初めから同じことばかり繰り返す
そんな壊れたテープレコーダー
媒体はどれでも一緒
但しMDなんか突っ込んだら壊れちゃうので
そこらは適当に調整してやってください
たぶんそれで十分です

生ものは冷蔵に
思考は冷凍に
さっさとフリーザーパックで小分けにして
そうそう中の空気を抜くことは忘れずに

携帯電話に翻弄されつつ
即興の噂話
囚われて捕らわれろ
嘘ばかりつくんだ
だから本音がむき出しなのかもしれないけれど
いつも適当に生きている
流されるように流れてる
ああどうしよう泳げないのに

人前に出ると言葉が詰まるのは
喉に手を突っ込まれてるからで
私の意志じゃないんです
お願いします殺さないでください

白と黒があるんなら
ねずみ色だって認められるはず
贅肉の付きすぎた二の腕あたりから
食い破るようにクマネズミくらい出てきてもおかしくない
それじゃあ太腿からはモグラかしら
背中からはモルモット
膨らんだ乳房にジャコウネズミが住み着くなら
なるほどカピバラが首筋を食いちぎるのかも

アルカロイドは中毒性があります
アンモニアは臭いです
アトムがまだ居ないのなら
アップルパイが焼きあがらないはずです

=2004/01/10=

《confused》

誰よりも惑いを隠せない
のは

対峙するのではなく
すれ違う事を望む
繰り返しこそが
全てであるように
変化を厭う

停滞はやがて澱を生み出す
なんてのは知っていて
それでも泥濘に浸かるのを
覚悟の上でやっていることを
知らないわけがなくて

進まない時間など
存在を否定されるだけの鼓動
ゆっくりと音を刻み
私を削っていくことも
少しは耐えられるかと思ったけれど

惑乱は私を招いて
混濁と共に夢見て

胸骨に科せられた咎
眼窩に押し込められた痕
四肢に絡みつく枷
脳内を駆け巡る

心地良いはずの
時間にどんどん追い詰められて
酔いに任せた身体と
醒めたままの意識を

解き放たれた 無我

=2003/09/03=

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